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浮体の水循環の視点

1. 水域の水循環システム

江東区計画2の想定地は、東京都江東区東砂町3丁目付近(東西に約400m、南北に約600m)で、東側は、荒川の堤防に直接面している。水域面積は、185,000㎡(陸地は、155,000㎡)で水深は5mを考える。想定人口は、4,000人程度(約1,800戸) から5,000人程度(約2,500戸)で、現在(2010.6)の東砂町三丁目の人口5,364人(2,348戸)をほぼカバーする。

江東区水上都市構想2の水域の写真 江東区東砂町付近の現状の写真
Fig.1 江東区水上都市構想2の水域 Fig.2 江東区東砂町付近の現状

年間の東京の降雨量は約1500ミリで277,500t/年となるが、地下への浸透や蒸発を考えると180,000t/年 <蒸発率+浸透率を0.35と仮定>程度と考えられる(一般的には、蒸発や浸透はそれぞれ25%程度であるが、浮体ユニットにより水面の露出が6割少なくなることを考慮)。この雨量は、この配水池で蓄えられる池の約1/5に相当するが、周辺の町の降雨もこの配水池に流れ込むことも想定する。本計画における給水システムは、既存の上下水道システムを補助として、井戸から地下水を汲み上げて生活水への活用を考える。さらに、一例として雨水をトイレ洗浄水として、トイレ洗浄水を除く生活排水を浄化する中水道システムとしたハイブリッド方式で考えた。

一方で、配水池の近くに水処理施設(処理能力:600㎥/日)を置くことを考える。この施設は、初期汚濁層(降雨初期の汚濁流出水の分離・貯留)、及び利水層(流出雨水の貯留・利水)の2つに区切られる。次に、浮体の居住施設について具体的な検討をしてみた。1浮体モジュールユニット当たりの人口は、約90人、1人1日300リットル(0.3㎥)水を使用すると考えると、1日使用水量は27tとなる。全体の44ユニットでは、年間427,680tになる(下表参照)。この内、中水の使用量は、便所及び風呂では21%、洗濯に24%、厨房に26%、手洗いに8%というデータがあるが、どれに使用するかで水量は決まる。仮に、便所、風呂および洗濯に中水を使用する場合、66%で年間282,269tとなり、残り34%の145,411tが既存の上水で賄う

下水の放出量は、便所に使用する89,813t以外に、戸建て住宅の全ての排水(30人分;112,622t)で、合計202,435tとなる。従って、配水池から放流される水量は、年間で57,024tとなり、雨水による増加(180,000t)より少ない(首都大学東京の卒業論文での検討結果より)。

表

水処理施設と中水道システムのイラスト
Fig.3 水処理施設と中水道システム

2.浮体の水循環システム

標準浮体モジュールユニット(面積2,500㎡;長さ100m×幅25m×高さ4.5m)を5つつなげた浮体構造物(斜線部分で以下、浮体地区Aという)に限定し、雨水利用について検討する。総面積が12,500㎡の浮体ユニット上には、集合住宅150戸、戸建住宅60戸があり、総人口441人が生活することを想定する。

浮体都市全体配置図のイラスト
Fig.4 浮体都市全体配置図

浮体構造断面図のイラスト
Fig.5 浮体構造断面図

浮体上に降る雨水を浮体ユニット上の住宅のトイレの洗浄水として利用することを想定する。住宅のトイレ洗浄水は、生活水の28%を想定し、この水道水使用量の削減が期待できる。図3に浮体ユニットの雨水貯留槽断面図を示す。また、図4に浮体都市雨水利用システムフロー図を示す。まず、浮体ユニット上に降る雨水は雨水ドレインを通じて浮体下部雨水貯留槽に貯留される。その後ろ過処理・消毒処理を行い、一度浮体内部雨水貯留槽に貯留され、高架水槽までポンプで汲み上げ、浮体ユニット上部の住宅でトイレの洗浄水として利用することとなる。

浮体都市雨水貯留槽のイラスト
Fig.6 浮体都市雨水貯留槽

3.浮体都市での雨水処理について

一般に、雨水を再利用する場合の水質基準には表1に示すものがある。流出雨水はある程度の濁度成分を含むと考えられるが、貯留時にこの濁度成分は沈降除去できると考え、雨水を再利用する場合の水質基準値であるBODを評価水質項目として用いた。雨水利用用途に応じた水質基準値以下となるかどうかで評価することとなる

なお、浮体都市での雨水利用における雨水用途は、トイレ洗浄水としているので、本研究での水質基準は下記の水洗用水の項目のものと設定する。

  水洗用水 散水用水 修景用水 親水用水
大腸菌群数 10個/㎖以下 検出されないこと 10個/㎖以下 5個/㎖以下
残留塩素 保持されていること 0.4㎎/ℓ以下
外観 不快でない 不快でない
濁度 10度以下 5度以下
BOD 10㎎/ℓ以下 3㎎/ℓ以下
pH 5.8~8.6 5.8~8.6 5.8~8.6 5.8~8.6
臭気 不快でない 不快でない 不快でない 不快でない
色度 40度以下 10度以下

表1.雨水利用時の用途別水質基準

浮体都市雨水利用システムフローのイラスト
Fig.7 浮体都市雨水利用システムフロー

4.雨水貯留槽、浮体内部雨水水槽および雨水高架水槽の容積について

一般的に、雨水は降水量の季節変動があるため、年間を通じて安定した水量を確保することが難しい。一方、トイレ用水の使用量は、年間を通じて需要の変動が少ない。そこで、より多くの雨水を利用し上水補給量を減らすには、降水量の多い月に余った雨水を貯めておき、降水量の少ない月に利用できるようにすることが重要であると考えられる。そのためには、ピーク時の雨水をくまなく貯留しておける適切な雨水貯留槽の容量を決定する必要がある。そこで、浮体の底に設置される雨水貯留槽の容積については、1日最大の降雨量(250mm)を十分に受け入れることのできる体積とするように設計した。まず、浮体地区Aの総面積12,500㎡に降る雨量の0.9倍を考えると、約2,800㎥の雨量となる。そして、浮体の下部のスペースを2m、雨水貯留槽の長さを90m(<浮体幅100m)とすると、雨水貯留槽の幅は、20mあれば十分ということになる(体積3,600㎥)。次に、浮体内部雨水水槽については、住民441人がトイレ等で使用する水の量は、1日37㎥であるので、約3日分の貯留を考えて浮体内部雨水水槽の容積を約110㎥必要と考える。浮体内のバラストタンク1区画のサイズが幅2m、長さ6m、高さ4mなので、3区画(144㎥)を考えることとした。また、雨水高架水槽については、必要水量を1日分37㎥として、幅2m、長さ2m、高さ2mのタンク5槽を高層集合住宅の屋上に設置することとした。

浮体都市での雨水処理システムの手順を以下に示す。

  1. 原則として、浮体上の建築物の屋根を含むすべての範囲に降る雨を採集する。
  2. 雨水ドレインを通して集め、浮体の底に設置された雨水貯留槽に貯水する。
  3. 雨水貯留槽の雨水を浮体内の雨水処理設備で使用可能な水に処理する。まず、砂ろ過装置のフィルターでゴミや砂等を除去する。
  4. 次の雨水の消毒過程では、塩素により滅菌を行う装置の水槽に雨水を入れる。
  5. 処理された雨水を最終的に雨水受水槽に蓄え、必要量をポンプで高層集合住宅の屋上に設置された雨水高架水槽に上げる。
  6. 重力による水圧で雨水パイプを通して浮体上の全ての建物に雨水を供給する。

図5に浮対都市雨水処理系統図を示す。同図では、別に雨水高架受水槽と共に上水の高架水槽が設けられているが、雨水のみで足りない分はこの上水から 補水・利用されることになる。また、表2に浮体都市での雨水利用設備の緒元を示す。

原水種類 雨水
処理方式 砂ろ過処理、塩素消毒処理
集水面積 12,500㎡
雨水貯留槽容量 3,600㎥
利用水量 13,505㎥/年
補給水量(種類) 185㎥(上水道)
雨水再生水貯留槽容量 160㎥
利用用途 水洗トイレ洗浄用水
稼働日数 365日

表2.浮体都市雨水利用設備緒元

下水処理水循環利用技術指針(案)、建設省、1981.3.
下水処理水の修景・親水利用水質検討マニュアル(案)、
建設省、1994.3. より作成

浮体都市雨水処理系統図のイラスト
Fig.8 浮体都市雨水処理系統図

浮体ユニットでの雨水利用システムの模式図のイラスト
Fig. 9 浮体ユニットでの雨水利用システムの模式図

5つの標準浮体ユニットの雨水利用システムの設備図のイラスト
Fig. 10 5つの標準浮体ユニットの雨水利用システムの設備図

(5浮体ユニット) (水域全体44浮体ユニット)
処理方式 濾過処理、消毒処理 同 左
処理能力 40㎥/d 320㎥/d
集水面積 12,500㎡/d 110,000㎡/d
貯留槽容量(浮体下) 3,600㎥ 32,400㎥
利用水量 13,542㎥/y 116,635㎥/y
補給水量(水道) 1,168㎥/y 9,900㎥/y
貯留槽容量(浮体内) 70㎥×2槽 70㎥×18槽
高架水槽容量 40㎥×4槽(2m×2m×2.5m) 40㎥×36槽
高架水槽用ポンプ 4台 36台
貯留槽容量(浮体内)用ポンプ 2台 18台
利用用途 水洗トイレ洗浄、植栽ほか 同 左
稼働日数 365日 同 左
上水系用途使用水量 38,179㎥/y 335,975㎥/y

雨水利用設備の緒元

水域内での浮体ユニット雨水貯留槽の模式図(イラスト)
Fig. 11 水域内での浮体ユニット雨水貯留槽の模式図

(注)本研究の内容は、平成22年度の首都大学東京4年生(当時)伊藤万葉氏による卒業論文から抜粋しました。

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