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浮体工学及び技術的視点

1.標準浮体ユニットの安定性能について

水上都市における自然外力には、地震、高潮や津波のほか、台風時における強風の影響が一番懸念されるが、地震については、支持杭が直接浮体に接続しているもののゴムダンパーを介しており、また浮体の大部分が水を介して地面に直接、接しないので影響は極めて少ないことが予想される。

超大型浮体構造物については、1990年代に日本の造船業界を中心に日本政府の後押しでメガフロートの実績「メガフロート技術研究組合」が設立された。研究計画の仕上げとしては1000メートルの浮体空港モデルを作り、曳航する試み、飛行機の離発着実験、環境への影響シミュレーションを行って、すでに成功を収めている。本研究の最大の利点は、造船工業界では、長年に渡って国、企業等からの多額の研究費を費やした数多くのメガフロートの実海域実験を含む貴重な実績や成果を蓄積しており、その技術を再び生かすことが可能となることである。本計画では、この技術実績を基に、さらに軟着低システム(複数の支柱で重さを一部負担する方法)を採用することで安全性を高めている。次に鋼製の標準浮体ユニットの自重の推定であるが、メガフロート計画のデータから推算して、0.167t/㎥を第一近似として使用した。この数値を本研究で考える標準浮体ユニット標準浮体ユニット(長さ100m×幅25m×高さ4.5m)に当てはめると、総重量が約1,880tを得る。

メガフロートの接合 写真
Fig.1 メガフロートの接合

標準浮体ユニットについては、喫水を3.0mと仮定すると、総排水量約7,500トンの浮体構造物となる。標準浮体ユニット上の上載建築物、バラスト水そして道路舗装等その他を合わせた総重量は8,580tとなり、この重量は、大部分を浮力、そして何本かの支柱に加わる反力で支えられる。この支柱の役割は、浮体ユニットの状態をより安定にするためと浮体の水平移動を抑えるためで、浮体ユニット総重量の1/10程度の力が加わる設計である。また、上載建築物の重量はばらつき(戸数、規模で)も想定されるのである程度の重量をバラスト水(0~1,550tまで調整可能)でカバーして調整できるように考えている。標準浮体ユニット上の建物には、最大積載可能重量(建物合計で5,450tの重量)から低層の戸建住宅12軒と高層集合住宅30戸(5~7階建で一部1階店舗)を考えている。ここでは、建物の重量を推定する為に一般的な建築物の文献調査を実施したが、その結果RC造の場合、平均的な単位床重量は載荷重量(1,800kg/㎡) を考慮して1.48t/㎡となったのでこの値を使っている。

この重量分布での浮体ユニットの重心位置は、7.47m(KG)となり、またメタセンター高さ(GM)は、図3に示すような5つの標準浮体ユニットを繋いだ場合(100m×125m)で計算してみると、横方向、縦方向でそれぞれ277.8m(横長100mのおよそ2.8倍)および434.0m(縦長125mの約3.5倍)で極めて安定した浮体となることが分かる。

2.標準浮体ユニットへの風の影響

次に、自然状況の悪化を想定した技術的検討を行った。まず想定場所付近の明治時代以降の過去のデータによると、時間最大雨量が115mm(H11.8の集中豪雨)、総雨量では、6日間で444.1mm(S33.9台風22号)でこの時の洪水による浸水面積は、実に211.3k㎡に及んだことが記録されている。この様な雨量に対しては、造成された水域が調整池となって働き、周りの低い土地で降った雨水の受け入れにも対応できる。また、最大潮位は、大正6年の9月の暴風雨時に観測された東京湾平均海面上3.08mがあり、この時は死者が1,524人に達したとされる。この時の最大風速としては、39.6m/s(方位はSSE)が記録されている。この一番気になる風であるが、最大傾斜を支柱の影響を無視して推定してみると、横方向の風で約0.04度、縦方向では約0.01度程度で影響は極めて少ないことが分かった(ただし、本計算では、浮体上部の建築物の抗力係数を2.0とし、風圧の高さ変化は無視している)。しかし本構想では、16本の支柱が10%強の荷重を支えており、これによる反力のモーメントは風速100mの時の風による転倒モーメントをも上回るので風による傾斜は実際にはゼロと考えてよい。

標準浮体ユニットに加わる風荷重 イラスト
Fig.2 標準浮体ユニットに加わる風荷重

計算式と説明


<定常流体力の式

:抗力(風または流れ)
:密度(空気または水)
:投影面積
:抗力係数
:風速または流速

説明
:レバー(上部構造物の中心と下部構造物の中心)

計算式と説明

浮体の安定性(イラスト) 風による傾斜角度の模式図(イラスト)
Fig.3 浮体の安定性 Fig.4 風による傾斜角度の模式図
超高層マンションに加わる荷重 超高層マンションの鳥瞰図
Fig.5 超高層マンションに加わる荷重 Fig.6 超高層マンションの鳥瞰図

3.超高層マンションに加わる風荷重と傾斜

検討する超高層マンションは、円形の建物で、直径は44m、高さは120m(34階)である。建物の重量は、72,400t(1.4 t /㎡として計算)、また鋼製の建物の基礎浮体を27,137tとして総重量を100,000tと見積もっている。基礎浮体の全高は、20m(喫水:15m、乾舷:5m)、喫水を15mの状態でのバラスト水重量は、12,500t(排水体積:112,500㎥)となるが、さらに15,300tのバラスト水を加え、その荷重を支柱8本で支持するようにする。そうすることで、水位が1.5mまで浮体は浮上せず、それ以上の水位になる場合に、浮上して建物への水の浸水を防ぐ。

超高層マンションのKG値は49.14 m、KM値は83.24 m(従ってGM 値は34.10 m) なので、風速50.0 m/s (10 minutes average value at 10 m height)でも、風水平力は、15,639 t (or 153,262 KN、転倒モーメント:38,535,000 KN m、) となり、支柱がない場合の傾斜角度は、 1.77 deg となる(実際は、支柱があるので傾斜角はほとんどない)。この時の風速は、50m/s(海面上10m、10分間平均値)であるが、風速の高さ方向の変化を考慮(1/7則:the Prandtl-von Karman universal velocity-distribution law)しているので、高さが115mの高さでは、風速は、70.9 m/sとなっている。なお、円柱の抗力係数については、1.2を採用

4.津波、高潮による水位上昇と水平力

風以外の自然外力については、海洋上の様な波浪も潮海流もなく地震、高潮そして大津波を除いて恐れるものはあまりない。しかし地震に対しては、浮体の場合、構造物の固有運動周期が長く、水による減衰が大きい(運動緩和効果の働き)ことで揺れも少なくなるので地面に直接接している通常の建築物の場合より安全側となる。

次に例えばゲリラ豪雨等による異常時を想定して内陸側の水面の水位が1m上昇するような場合を検討してみる。この場合、図6に示すように浮体ユニットは0.7m浮き上がる(30cm沈み込む)程度で釣り合い、またこの時の浮体と支柱の上端の間は少し離れて浮体ユニットが浮いた状態となる。浮体故に、さらに水位が上昇しても、これ以上は沈むことはないので安全といえる。津波や高潮のように外部からの水流、水圧に対しては、水域AとBの間には、高さ3mの堤防で仕切られており、より安全ではある。巨大津波や極端に高い高潮の場合、堤防の決壊を防ぐために少しづつ、水量を通す仕組みになっているので、水平力は極めて小さくなる。

津波による水位の上昇については、東京湾に侵入する最大の津波高さは、2.5mとされ、また荒川堤防の高さは5mとなっている。超高層マンションの浮体基礎の乾舷は5.0mであるが、津波や高潮による水位の異常な上昇で2.5m上昇しても浮体基礎が浮上するので、乾舷は3.5mが維持される。

次に、あまり想定できないが、津波や高潮が直接、超高層マンションを襲った場合の水平力についても検討を行ったが、基本的には、浮体基礎のアスペクト比が小さいので、津波は浮体の下を通り抜けることで影響はすくない(少し浮上するだけ)。津波、高潮による水平力については、津波速度を10.0 m/sと仮定すると、抗力は、15,690 t (or 153,750 KN)となり、この値は排水量の112,500tと比較して一桁少ない数値となり、十分に8本の支柱で対応できる。なお、抗力係数を2.0、また津波速度を10.0 m/sは、2004年のインド洋津波で10mの水深で観測されたものであることを付記する。

水位上昇時の浮体の浮上(イラスト)
Fig.7 水位上昇時の浮体の浮上

次に、沿岸部で外洋に面しているような場合、東日本大震災の時のように極めて高い津波による水位上昇が防げない状況が想定される(巨大台風の高潮でも同様)。この場合は、補助サポートを付けておくことで、浮体の漂流を防ぐことができる(構造物は補助サポートに沿って上下動するのみ)。この場合、迫る水塊のほとんどが浮体の下部を通過するため、また、浮体基礎自体に加わる水平方向の荷重は、どの高さにおいてもほぼ一定(浮体基礎の幅は不変)なので、数本の補助サポート程度で十分に機能が維持できる。

沿岸付近の高潮、津波で数mを超える水位上昇のケース(補助サポート)イラスト
Fig. 8 沿岸付近の高潮、津波で数mを超える水位上昇のケース
(補助サポート)

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