気仙沼を襲った地震・火災・津波の巨大複合災害後の再建に向けた気仙沼市魚町・南町内湾地区の復興まちづくり建築コンペに応募したもので、その内容から、主として技術的な観点から提案のコンセプトをまとめてみます。本提案では、防災・減災の観点による技術的手法と共に、街づくり・住まいづくり・コミュニティづくりの在り方を建築的にも考えます。建築的観点からは、本構想が震災後も気仙沼の歴史・文化の継承ができるとともに、市民の約40%が関わっている漁業や観光産業を中心とした気仙沼本来の産業の再生・活性化と賑わいを取り戻せる快適な良好な空間の創出を基本理念として、安心・安全な生活基盤に浮体の活用をめざしました。具体的には、この震災で失った貴重な建築物を中心にメモリアルパークを造るとともにコミュニティスクールにおける生涯学習を基にした住民同士のつながりを強化できる工夫を考えております。また、浮体上に建設する建築物については、主に1,2階に商業・業務施設、コミュニティ施設、3階以上に居住空間を設けて、職住が近接したまちづくりを計画しています。
大震災前の平成23年におけるこの地域の人口は840人、340世帯でしたが、昭和50年当時では2,334人となり、人口が著しく減少しています。そこで本構想では、想定人口を1,280人(520世帯)としました(ただし、浮体上は268世帯)。アンケートによると、この地域に住んでいた人々の60%以上が、政府が促進している高台への集団移転ではなく、同じ場所に住みたいと希望していることが分かっております。そこで、本構想では、あくまで、震災前の場所での設置を計画することを第一に考えております。そして都市、観光・物産施設のほか、産業の目玉は水産業の事業所数274の内124を、そしてコミュニティスクールは20を浮体上に設置することを考えました。
日本政府の東日本大震災の復興計画指針では、“数十年~百数十年に1度来襲する頻度の高い津波を海抜6.2m(レベル1)と最大クラスの津波で500年~1,000年に1度の頻度(レベル2)の2段階を示す”ことが示されております。そこで本提案では、レベル1に対応する防潮堤を気仙沼唐桑線の道路とし、高さを海抜6.2m(レベル1)とし、その海側に位置する気仙沼港線の道路の高さを海抜2.0mとしております。レベル2については、防潮堤の内側の建築物は、浮体構造としているので、12.0m程度の津波高さに対しても十分対応可能となっております。また、津波が防潮堤に達するまでに避難できる十分な時間があることを考慮して、防潮堤の外側については、避難経路を整備することで対応することとしました。
Fig.1 気仙沼構想の建設プロセス
Fig.2 気仙沼市の情景 | Fig.3 気仙沼の港湾の8つの人造水域 |
Fig.4 気仙沼構想の鳥瞰図
[参考文献]
T. Nakajima, U. Kawagisi, H.Sugimoto and M.Umeyama, “A Concept for Water-based Community to Sea Level Rise in the Lower-lying Land Areas”, Oceans’12, 2012MTS/ IEEE International Symposium, Hampton Road, Virginia, October 15-18, 2012
Nakajima, T.; Umeyama, M. Novel Solution for Lower-lying Land Areas Safe from Natural Disasters ? Toward Reconstruction of Lost Coastal Areas in Northeast Japan ?. Journal of Marine Science and Ocean Engineering, ISSN 2077-13121(1), pp 520-538, 2015