2020年10月6日~8日に、オランダのロッテルダムで、Blue21とWaterstudio がホストになり、浮体に関する国際シンポジウム “Paving The Waves”が、シンガポール浮体協会(Society of Floating Solutions, Singapore (SFSS))との共同開催で行われました。当初は、ハイブリッドでの開催が予定されていましたが、新型コロナ流行の感染急拡大のため、残念ながらオンラインのみの開催となりました。全部で50件以上の論文発表がありました。
この国際会議の目玉に、MARIN というオランダ最大級の実験水槽で、海上都市の浮体式人工地盤を想定した浮体の水槽実験が催されました。この浮体構造物の特徴は、通常の巨大な箱型を幾つかの浮体要素に分割して、接合部にヒンジを用いることに寄り波力を柔軟に交わせる構造となっていました(Fig.1)。
Fig.1 MARIN の水槽で実験された新型の浮体モデル
この国際会議での我々の発表した論文タイトルは、”A study on Stability of Floating Architecture and its Design Methodology (by Toshio Nakajima, Yuka Saito and Motohiko Umeyama)”で、内容は、海洋建築物の浮体の設計手法を示したものです。あらゆる荷重によるモーメントを想定したときに、構造物の傾斜を一定角度(φ)に抑えるために必要なGM値を得るための最小限の浮体サイズを計算することが出来ます(次図)。
Fig.2 最大モーメント状態での浮体サイズ(全長L、喫水d)の決定
2019年4月22日~23日に、シンガポールで、シンガポール浮体協会(Society of Floating Solutions, Singapore (SFSS))による浮体の活用に関する国際シンポジウムが開催されました。世界中から浮体および海上都市などに関する専門家が招待され、今後の浮体の活用について27件の論文が発表されました。会場になったシンガポール国立大学には、約100~150人が集まり、熱い議論が交わされました。会議の後のサイトツアーでは、池に設置された世界最大級といわれる浮体式の太陽光発電装置のテストプラントの見学会、そしてシンガポール国立大学の深海水槽を訪問しました。この国際会議では、我々もゴールドスポンサー企業の一つとして貢献しました(Fig.1)。
Fig.1 ゴールドスポンサー企業としての表彰の盾
なお、本国際会議の論文の1件として、” An integrated floating community based upon a hybrid water system: toward a super-sustainable water city (by Toshio Nakajima & Motohiko Umeyama)”を発表しました。この論文の内容は、このホームページで紹介している水上都市の主として「ハイブリッド水供給システム」に関するものです。
Fig. 2 会議場での論文発表の光景
2018年12月5日~6日に、ノルウェーのオスロ市郊外にある見本市会場「Evolve Arena」、において、将来の都市に関する展示会・講演会「Future City Expo 2018」が催されました。その会場で、「水上都市」を紹介するブースを設け、多くの人に、私たちの構想を説明する機会を得ました。 来場者の多くは、企業、起業家、公務員、専門家、一般人、学生等でした。その中に、ノルウェーの石油開発企業であるEquinor社が「Floating City」に関する講演会等を大々的に実施していました。
Fig. 1 国際見本市”Future City Expo’18”の会場 「EVOLVE ARENA」
Fig.2 “Sustainable Water City”展示ブースを訪れたKoen Olthuis氏
Fig.3 展示会のプログラムパネル
Fig.4 「未来都市」講演セミナー会場の様子
Fig.5 “Sustainable Water City” 展示ブースでの説明の様子
2018年、米国のTV放送番組(PBS)のドキュメンタリー番組“Sinking Cities” に、「持続可能な水上都市」が紹介されました。全4回にわたるドキュメンタリー番組(ニューヨーク、ロンドン、マイアミそして東京)の中で「東京に関するいろいろな水害対策」について紹介されましたが、その映像の中で、私たちの江東区「水上都市」の模型と自然災害に対する適応策の概要が説明されました。 この映像は、同年12月に、ノルウェーのオスロで開催されました「未来都市」博覧会”Future City Expo’18”の会場でも上映され、好評を得ました。当時、公開していた我々の独自のブースでの「水上都市」の宣伝にも、大変、寄与しました。
ドキュメンタリー番組の概要
この番組は、海面上昇、洪水、高潮、ゲリラ豪雨などによる沿岸都市への影響に関するドキュメンタリーです。東京などの大都市はどの様に水害から守られているのかを番組の中で検証します。日本は洪水、高潮、津波などの水害に対して世界でも最も対策がとられている国のひとつです。東京都が水害から都市を守るために、どのような設備を建設されているか、またどのような対策を取られているか、などについて番組で紹介されました。
Fig.1 PBS: “Sinking Cities” のDVD表紙
シュプリンガー出版社(SpringerNature)は、2016年4月、新プロジェクト「論文が世界を変える:2015年出版の必読論文」をスタートさせました。このプロジェクトでは、2015年に同社が出版した論文のうち、エネルギー、食糧、水、気候、社会的平等、医療・健康など、世界が直面する最も緊急性の高い課題に取り組む研究論文にフォーカスし、オンラインの特集ページにて公開することになりました「Change the World, One Article at a Time」。この新プロジェクトで、”Journal of Ocean Engineering and Marine Energy” に掲載された私たちの水上都市の論文”A new concept for the safety of Low-lying land areas from natural disasters (by Nakajima, T & Umeyama, M)” が、幸いにも、選考されたシュプリンガー100編の論文の一つとして選ばれました。なお、この100編の論文には、日本人研究者の論文も数編含まれています。
Fig.1 シュプリンガー100編の論文の一つとして選考!