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浮体の雨水シミュレーション

1.雨水貯留シミュレーション

一般的に、雨水は降水量の季節変動があり、また、トイレ用水の使用量は、年間を通じて需要の変動が少ない。そこで、毎月の雨量貯留シミュレーションを計算することで、本研究による雨水貯留システムが機能するかについて以下に検討を行った。図1は平均的な降水量約1,300㎜が得られた2007年4月から2008年の3月の雨水貯留シミュレーションである。赤い棒で示す雨水量のうち、トイレ用水として毎月1,147㎥ (37.0㎥/日×30日) 使用し、その残りが翌月の月タンク貯水量として、青い折れ線グラフに表されるようになっている。その毎月のタンク貯水量の累計は黄色の折れ線で示される。この年のシミュレーションでは、上水からの補給は行われず、最大累計タンク貯水量は約3,500㎥となっている。この値は、先に計画したタンク容量3,600㎥の範囲内となっている

また、降水量が少ない1994年4月-1995年3月についても同様のシミュレーションを行ったのが、図2に示すグラフである。なお、この1,994年の年間降水量930ミリであったが、これはこの地区では11.4%程度と約10年に1度の割合の降水量が極端に少なかった年といえる。図3の水色の棒で示すのがその月の水道水の補給量であり、その量は年間3,043㎥となった。この数値は、浮体地区Aでの年間トイレ用水使用量のたかだか22.5%である。

雨水貯留シミュレーション(2007年4月-2008年3月)
Fig.1 雨水貯留シミュレーション(2007年4月-2008年3月)

雨水貯留シミュレーション(1994年4月-1995年3月)
Fig.2 雨水貯留シミュレーション(1994年4月-1995年3月)

江東区年総降水量グラフ(アメダス)
Fig.3 江東区年総降水量グラフ(アメダス)

2.計画地での想定雨水量と必要降水量

計画地での想定雨水量を算出すると、過去35年間の平均降水量1340㎜のときの想定雨水量は、15,075㎥/年となる。次に、浮体地区A 441人で1日に使用されるトイレ用水の量は37.0㎥であったことから、年間トイレ用水は13,505㎥となり、式(1)を用いて逆算していくと、この年間トイレ用水13,505㎥をまかなうために必要な降水量は1,200㎜となる。したがって、年間降水量1,200㎜が得られれば100%のトイレ用水を、雨水のみでまかなうことができるということになる。反対に、もし1,200㎜の降水量が得られなかった場合には、随時水道水からの補給が必要になる。なお、計画地の過去35年間の降水量では、74%の年が降水量1,200㎜を超えていることを付記しておく。

浮体地区Aで得られる計画雨水量の算定には、東京都下水道事業計画設計基準に示されている次式により計算を行った。

Q=C・q・A・10-3 (1)

ここで、
Q:計画雨水量(㎥/年)
C:雨水流出係数
q:降水量(㎜/年)
A:集水面積(㎥)

たここで、雨水流出係数とは、一般的に排水区域内に降った雨は、そのすべてが流入するわけではなく、一部蒸発、あるいは地下に浸透することから、流入する雨水量の算定のために東京都下水道事業計画設計基準によって定められている、流入雨水量の降水量に対する比率である。この流出係数は、排水区内の土地の利用形態に応じた表面工種面積費を測定し、これに道路の固有流出係数0.90、屋根の固有流出係数0.95、空地の固有流出係数0.30を用い、総合平均流出係数として次式により算定した。

計算式 (2)

ここで

なお、本研究の浮体都市では、地盤上に降る雨は浸透せず、蒸発する分のみを考慮するため、雨水流出係数は、道路の固有流出係数に習い、0.9と仮定した。

(注)本研究の内容は、平成22年度の首都大学東京4年生(当時)伊藤万葉氏による卒業論文から抜粋しました。

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